編集メモ:本記事は小中学校でよくある授業場面をもとに構成し、製品機能・公開されている教育資料・実際に実行できる指導手順と照らし合わせて確認しています。実践にあたっては各地域の教育課程と学校の方針に合わせて調整してください。架空の教員像や検証されていない効果の宣伝は行っていません。
ゲーミフィケーションとゲーム型学習の違いがまだ整理できていない方は、ゲーミフィケーション学習の全体像・教室での例・ツールの選び方から読んでください。
教育のゲーミフィケーション、という言葉はもう耳にしていると思います。ポイント、ランキング、チャレンジといったゲームの仕組みを授業に持ち込んで、生徒の参加を引き出す方法です。研修で聞いた、記事で読んだ、同僚がやってみて手ごたえがあったと話していた。それで「うちのクラスでも試してみたい」と思って指導案の用紙を開き、そこで手が止まった。そういう方に向けて書いています。
指導案の型そのものは体に入っているはずです。本時の目標、指導過程、評価規準。ここは書けます。分からないのは、ゲーム要素を「どの欄に」「どう書くか」です。ポイント制を授業の流れに入れて、授業そのものが崩れないのか。ごほうびに気を取られて、肝心の学習から意識が離れないか。そして、学年会や研究授業で出しても通る指導案として、それをどう文章にするのか。
この記事はその三つに答えます。まず指導案の基本構成を確認し、次に各欄にゲーム要素を組み込む手順を順に見ていきます。最後に、完成版の指導案を二本(小4理科の45分と、中1数学の50分)そのまま載せます。教科が理科でも数学でも国語でも、枠組みは同じように使えます。
指導案の基本構成:土台を先に固める
ゲーム要素を足す前に、指導案の骨格を確認しておきます。経験年数にかかわらず、この項目が授業を支えています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本時の目標 | この一時間の終わりに、生徒が何を分かり、何ができるようになっているか。知識・技能、思考・判断・表現、学びに向かう力の三つの側面で書きます。 |
| 対象 | 学年と学級の実態。学習に支援を要する生徒がいるかどうかもここに書いておきます。 |
| 時間 | 1単位時間の長さ。小学校は45分、中学校は50分。2コマ続きなら90分・100分で組みます。 |
| 指導過程 | 授業の流れを時間で区切ったもの。ふつうは導入・展開・まとめの三段階で、展開を複数に分けることもあります。 |
| 教材・教具 | ワークシート、掲示物、電子黒板、1人1台端末など、この時間に使うものすべて。 |
| 評価規準 | 目標に達したかどうかを、どの場面の、どんな姿で見取るか。授業中の見取りと、ワークシート等での確認の両方を書きます。 |
見慣れた形だと思います。大事なのは、ゲーミフィケーションを入れてもこの構成を壊さなくてよいということです。骨格はそのまま。変わるのは各欄の中身の書き方で、そこに学習を動かすゲームの仕組みを足していきます。
ゲーム要素を指導案に組み込む方法
よくある誤解は、ゲーミフィケーション=授業中にゲームで遊ぶこと、というものです。そうではありません。ポイント、挑戦、即時のフィードバック、協働、競争といったゲーム設計の要素を借りてきて、今やっている授業活動の中に埋め込むことです。次の指導案を書き直すときに使える方向を四つ挙げます。
1. 本時の目標に「意欲」の一行を足す
ふつうの目標は知識・技能に寄ります。「天気の様子を三つ説明できる」のように。ゲーミフィケーションを入れる指導案では、そこに参加そのものを狙った一行を並べて書きます。たとえば「班対抗のポイント制の中で、進んで発言し、友だちの考えを聞こうとしている」。これは飾りではありません。参加を高めるための活動を最低ひとつは設計する、と自分に課すための一行です。書いてしまえば、意欲は偶然の産物ではなく計画された結果になります。
2. ポイントとごほうびの仕組みを決める
ポイント制は一番入りやすいゲーム要素です。指導案には配点をはっきり書きます。正答10点、補足の発言5点、班の課題完成20点。ルールは、授業の冒頭で一度言えば全員が飲み込める程度に単純でなければ回りません。ごほうびは物である必要はありません。教室に貼った班の順位、「今日の◯◯博士」の称号、教師からのひとことの承認で十分に動きます。細かい条件まで指導案に書いておくと、次に同じ授業をやるときにも運用がぶれません。
3. 競争か協働を組み込む
競争と協働は、参加を引き出す力が強い二つのエンジンです。指導過程の中に、班対抗の早答え、問題解決リレー、単元テーマの勝ち抜き戦といった時間を確保します。競わせるより協働が合うクラスなら、班員全員がひとつずつ持ち寄らないと完成しない課題にします。指導案には、班の分け方(学習班のままか、その場で組み直すか)、ルール、採点の基準まで書いておきます。ここが曖昧だと、当日の教室で必ず止まります。
4. 即時のフィードバックを計画に入れる
ゲームが引き込むのは、動いた瞬間に結果が返ってくるからです。教室ではふつう、そこが遅れます。テストは数日後、宿題は週明け。ゲーミフィケーションはこの間隔を縮めます。指導過程の各段のあとに、短い確認の場面を差し込んでください。3分の小テスト、挙手での確認、端末での投票。どれでも構いませんが、時間を明記しておくことが肝心です。分数を書いていない確認の時間は、授業が押した日に必ず飛ばされます。
ゲーミフィケーション指導案 テンプレート1:小4理科(45分)
完成版の指導案です。そのまま出発点にして、学級の実態に合わせて書き換えてください。
| 教科 | 理科 |
| 単元・題材 | 天気の様子と季節のうつりかわり |
| 対象 | 小学校4年(30名程度) |
| 時間 | 45分(1単位時間) |
| 本時の目標 |
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| ゲーム要素 |
|
| 教材・教具 |
|
指導過程
| 時間 | 段階 | 学習活動 | ゲーム要素 |
|---|---|---|---|
| 0〜7分(7分) | 導入 | 今日の空の写真を電子黒板に映し、「今日の天気は? どこを見て決めた?」と問う。数名が気づいたことを発表。めあて「天気のようすと季節をむすびつけよう」を板書し、本時が「お天気チャレンジ」であることと得点のルールを伝える。 | ルールの提示。これから始まるという期待をつくる |
| 7〜20分(13分) | 展開① | 季節ごとの天気の特徴を資料で確認する。1季節おわるごとに早答えを1問はさむ。「この季節にいちばん多い天気は?」班で相談してから挙手で答える。 | 早答え(正答+10、補足+5) |
| 20〜33分(13分) | 展開② | 班の協働課題。各班に天気の写真カード12枚を配り、5分で四季の台紙に分類する。教師は残り時間を読み上げ、机間指導で手の止まっている班に一声かける。時間になったら班どうしでカードを見合い、根拠を言い合って確かめる。 | 時間制限つき課題。班の協働に加点(全問正解+20、誤り1枚につき−2) |
| 33〜40分(7分) | 展開③(定着) | 〇×クイズ5問。1問ごとに班のミニホワイトボードに答えを書き、合図で一斉に掲げる。その場で正誤を確認し、間違いが多かった問題だけ理由を丁寧に説明する。 | 即時フィードバック。全問正解+10 |
| 40〜45分(5分) | まとめ | 班の合計点と順位を発表し、優勝班に「お天気博士」を渡す。めあてに戻って本時の要点を板書でまとめ、ふりかえりを一行書かせる。ワークシートを家庭学習用に配付。 | 順位の発表。称号によるごほうび |
| 評価規準 |
|
この指導案が、ふだんの指導案とまったく同じ形をしていることに注目してください。違うのは、どの段階にもゲーム要素が一つ入っていることだけです。早答えの加点、時間制限つきの班課題、その場で返る正誤、最後の順位発表。高度な機器はどれにも要りません。いつもやっている活動を、少し違う包み方にしているだけです。
ゲーミフィケーション指導案 テンプレート2:中1数学(50分)
二本目は中学校です。教科も校種も違っても同じ枠組みが動くことを見てください。
| 教科 | 数学 |
| 単元・題材 | 比例(比例の式と比例定数) |
| 対象 | 中学校1年(32名程度) |
| 時間 | 50分(1単位時間) |
| 本時の目標 |
|
| ゲーム要素 |
|
指導過程(要約・合計50分)
- 導入(8分):身近な場面から入ります。「1本80円のペンをx本買うと代金はy円。xが2倍になると、yはどうなりますか」。表を板書し、隣どうしで30秒だけ確かめさせてから、めあて「表から比例の式をつくろう」を書きます。そのうえで、本時が「レベルアップ課題」であること、ブロンズ・シルバー・ゴールドの三段階と、班対抗リレーが後半にあることを伝えます。ここを丁寧にやると、後半の切り替えが速くなります。
- 展開①(17分):最初の5分で比例定数の求め方を全体で確認し、残り12分は個人のレベルアップ課題に入ります。ブロンズは表から比例定数を求める基本問題6問、シルバーは y = ax の式に表す問題6問、ゴールドは文章題とグラフの読み取り3問。前の段をクリアしてから次に進む決まりにします。教師は机間指導で丸つけをして、その場で次の段のプリントを渡します。手の止まった生徒には、答えではなく表の見方を一つだけ言葉にして返します。
- 展開②(15分):班対抗リレー。各班が1人ずつ電子黒板の前に出て、比例の問題を1問解きます。正解が確認できたら次の班員と交代。6問を先に全問正解した班が勝ちです。速さだけで決まらないよう、「式を書いていない解答は正解にしない」を最初に宣言しておきます。この15分で教室の空気は目に見えて変わります。
- まとめ(10分):レベルアップの到達状況を発表し(ゴールドまで届いたのは誰か)、リレーの結果を伝えます。そのあと、比例定数の意味と y = ax の形を板書で整理し、リレーとレベルアップ課題で多かった誤り(比例定数と切片の混同、単位の書き落とし)を二つだけ取り上げます。最後にふりかえりを一行書かせて回収します。
この指導案の強みは、個人の挑戦と班の競争を組み合わせているところです。レベルアップ制のおかげで、生徒はそれぞれの到達度に合った問題に取り組めます。簡単すぎて退屈する生徒も、難しすぎて手を止める生徒も出にくい。そのうえでリレーが、単調になりがちな練習の時間に勢いと班の一体感を持ち込みます。
ゲーミフィケーション指導案の設計上の注意点
効果はあります。ただし、思っていたのと違う結果にならないために、押さえておきたい原則がいくつかあります。
毎時間やるものではありません
ゲーミフィケーションは手立ての一つであって、毎日の義務ではありません。どの授業でも早答えとポイント集計と順位発表が続けば、生徒は飽きますし、目新しさが効かなくなります。使いどころを選んでください。静かに読み、じっくり考えることが中心の授業に、無理に重ねる必要はありません。目安としては週に1〜2時間くらいが、続けやすく、しかも新鮮さが保てる頻度です。
ゲーム要素は本時の目標に従属します
これがいちばん大事な原則です。ポイントもごほうびも競争も道具であって、目的ではありません。目的は学習です。おもしろいけれど本時の目標とつながらない仕掛けは、指導案に入れるべきではありません。一つ設計するたびに「この活動は、本時の目標に近づけるか」と自分に聞いてください。答えが「はい」なら残す。「ただ楽しいだけ」なら、迷わず削ります。
評価規準とゲーム要素を結びつけて書く
指導案に落とすときにつまずきやすいのがここです。得点は評価ではありません。班の合計点をそのまま評定に持ち込むと、たまたま速い生徒がいた班が得をするだけになります。書き方としては、ゲーム要素は「学習活動」の欄に置き、評価規準の欄にはその場面で見取る生徒の姿を書きます。たとえば「早答えで正答した」ではなく「早答えの後に、そう考えた理由を式や言葉で説明している(展開①)」。こう書いておくと、研究授業で参観者に見てほしい場面もはっきりしますし、ゲームが評価の中心にすり替わるのを防げます。
生徒による違いに手を打っておく
ゲーム化した授業は、速くて自信があってよく発言する生徒に有利に働きがちです。放っておくと、おとなしい生徒や学習が苦手な生徒はさらに後ろへ下がります。指導案の段階で先に手を打ってください。
- 難易度の違う問題を複数用意し、どの生徒にも得点する機会が実際にあるようにする
- 班の課題では役割(記録・発表・確かめ)を決め、全員が必ず何かを担うようにする
- 速さのごほうびだけでなく、「のび賞」「協力賞」のように別の姿にも光を当てる
- 個人の順位より班の順位を前に出し、一人にかかる圧を下げる
授業後のふりかえりを残す
授業が終わったら、数分でいいので書き残してください。学習は進んだか。盛り上がっていたのは本当に参加なのか、ただ騒がしかっただけか。どのゲーム要素がいちばん効いたか。どれが空振りだったか。指導案の最後に「授業のふりかえり」の欄を作って、その場でメモを足しておきます。何回か重ねると、自分の学級に何が効くかを教えてくれる資料になります。
生徒に直接聞くのも早いです。短いアンケートでも、授業後の雑談でもいい。こちらが盛り上がったと思った活動が、ある生徒にはしんどかったかもしれません。逆に、こちらが平凡だと思っていた場面がいちばん楽しかった、ということもあります。生徒の声は、指導案を直すときのいちばん確かな手がかりです。
学年で共有するときのひとこと
学年会でこの指導案を出すときは、「ゲームをします」ではなく「本時の目標を、どの場面でどう見取るか」から話すほうが早く通ります。得点のルールは資料の隅に一枠あれば十分です。加えて、他のクラスでもそのまま回せるように、班の分け方と配点だけは学年でそろえておくと、次の学年会で「うちのクラスではこうだった」と比べられるようになります。担任が替わっても残る形にしておくと、翌年の自分が助かります。
指導案から教室へ:運用をツールに任せる
指導案を書くのが一段目、当日それを滞りなく回すのが二段目です。点数を手で数え、順位を書き換え、早答えの問題を出す。この作業は確実に負担になります。1回のゲーム化授業のために得点表づくりと集計で1時間余分に取られるなら、続きません。
そこを引き受けるのが SparkMyClass です。教師のために作られた学級経営ツールで、指導案に書いたゲーム要素をそのまま動かせる機能がそろっています。
- クイズゲーム:早答え、〇×、選択問題を数分で作れます。生徒は1人1台端末で答え、採点と集計は自動。手で数える必要はありません。
- 行動ポイント:授業中にワンタップで加点・減点。班の得点が教室の画面でその場で動くので、生徒の側からも状況が見えます。
- プレゼンテーションモード:得点表、順位、カウントダウンを電子黒板に投影します。競争の雰囲気をつくるために、別の掲示物を用意する必要がありません。
道具が合っていれば、指導案に書いたゲーム要素は紙の上で終わりません。教室で実際に動きます。そのあいだ先生は、いちばん大事なこと、つまり目の前の生徒を見て、その場で反応することに集中できます。
まとめ
ゲーミフィケーションの指導案づくりは、難しいものではありません。指導案の型を作り直す必要はなく、いま使っている構成のまま、ポイント制、競争または協働、即時のフィードバックを意識して差し込むだけです。この記事では、そのまま持っていって自分の教科と学年に合わせられる指導案を二本、45分と50分で示しました。
押さえておきたいのは三つです。ゲーム要素は必ず本時の目標に従うこと。生徒によって必要なものは違うので、設計に幅を持たせること。そして、毎時間やる必要はなく、使いどころを選ぶほうが効くこと。何より大事なのは、一度やってみることです。最初のゲーミフィケーション指導案がうまくいかなくても構いません。一回ごとに、自分の生徒について分かることが増え、そのクラスで本当に動く形に近づいていきます。
指導案の実行をもう少し楽に、そして続けられるものにしたいときは、SparkMyClass を試してみてください。